神戸新聞2019年3月6日掲載
執筆者:茅根 豪弁護士
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個人で飲食店を営業している友人からお金を貸してほしいと言われたので100万円を貸し、6年が経過しました。返済を請求したところ、既に時効だから返済しないと言われました。請求できないのでしょうか。
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相談者が100万円を請求できるか否かは、100万円の貸金債権が商行為によって生じた債権なのかどうか、あるいは時効の中断はなかったか、などによって決まります。
商行為に当たれば、商法によって消滅時効は5年間、そうでなければ民法により10年間となります。100万円が商行為によって生じた債権に当たるなら、消滅時効にかかっている可能性が高いといえます。
商行為によって生じた債権というのは、例えば、友人が飲食店の営業に使うために100万円を貸し付けた場合などです。運転資金として貸し付けた場合なども同様です。
このような場合だと、債権は商行為によって生じており、6年たった現時点では時効となって消滅していると思われます。ただし、いずれのケースでも、その友人との間で「2年後に返す」などの約束があれば、時効期間の進行が「2年後」からとなります。2年後からだと現時点で4年しか経過していないので、5年間の時効にはかかりません。
逆に、商行為によって生じた債権といえないのは、例えば、友人から子どもの学費に使うからと言われて100万円を貸していた場合などです。この場合だと、商行為によって生じた債権ではないため、商法ではなく民法の規定に従うことになり、現時点でも請求できると思われます。
時効の中断がない、または時効消滅の可能性が高いような場合であっても、時効を中断させる事情が生じていれば、中断時点から再び5年が経過しないと時効になりません。そのような事情がなかったか、自身の記憶や記録を確認してみましょう。 例えば、100万円の借り入れについて認めるような言動を、友人が過去5年以内に取っていた場合です。一部を返済していたり、「必ず返します」と書いたメモを差し入れていたりしたなどの事情が考えられます。このような行為は債務の承認と呼ばれ、時効を中断させることができます。