神戸新聞2019年1月23日掲載
執筆者:安藤 秀昌弁護士
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娘と交際相手との間に子どもができましたが、交際相手は認知をしないと言っています。 認知を求めることはできるのでしょうか。また、 認知の有無によって何か違いはあるのでしょうか。
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結婚していない男女の間に子どもができ、相手の男性が自分の子どもであると認めて自発的に認知の届け出をしない時には、相手の男性に対して認知を求める調停を家庭裁判所に申し立てることができます。また、調停で話し合いがつかない場合には、強制的に認知を求める訴えを家庭裁判所に起こすことができます。
子どもが胎児のうちは、裁判で認知を求めることはできませんが、子どもが生まれた後は母親が法定代理人として認知の訴えを提起できます。なお、子どもが成長し判断能力があれば、未成年でも母親の同意なしに単独で認知の訴えを起こすことができる場合があります。
認知の訴えは、父親の生存中は期間制限がなく、いつまでも提起できますが、父親が死亡した後は、亡くなった日から3年間に期間が制限されます。
認知を求める裁判では、子どもと父親との間に血縁関係があることを証明しなければなりません。最近はDNA鑑定で、かなり正確に父子関係の判定ができるようになりました。もっとも、父親がDNA鑑定に協力しない場合には、直接証拠がなく、どのように父子関係の存在を証明するのか困難な問題が伴います。では、認知の有無によって何か違いはあるのでしょうか。
認知がなければ、法律上父子の間には何の関係もなく、通常の親子間で認められる権利も義務もありません。認知があれば、父子間に法律上の親子関係が生じます。このため、典型的なことでは、父は子に対して扶養義務を負いますし、子は父に対する相続権を取得します。
認知の効力は、子が生まれた時にさかのぼります。父は子が生まれた時から扶養義務を負うことになるので、認知までに子を養育してきた母は、父に対し、父が負担すべきであった養育費をさかのぼって請求できることもあります。父親が死亡した後に認知した場合でも、さかのぼって相続人となれます。ただ、いずれの場合も一定の制約はあります。