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2018年

オークションの商品を運送会社が紛失-落札金額は賠償請求できず-

 神戸新聞2018年12月19日掲載
執筆者:野条 健人弁護士

 ネットオークションに出品し、落札者に商品を配送しましたが、落札者から届かないと言われ、支払ってもらえませんでした。紛失した運送業者に落札金額を請求できるのでしょうか。

 この場合、運送業者が出品者の依頼を引き受けて配送していますので、出品者は運送業者との間で運送契約を結んでいることになります。運送契約は運送依頼を受けた運送業者が依頼主の希望する場所に品物を運び、依頼主から代金の支払いを受けることを目的とする契約です。

 運送依頼を受けた業者は依頼主の希望する場所に商品を運ぶ義務がありますので、依頼を受けた運送業者は、依頼された運送品の滅失については損害賠償責任を負うのが原則です。

 もっとも、運送依頼を受けた運送業者が運送品の受け取りや引き渡し、保管および運送に関して何ら不注意がなかったことを証明できた場合には、業者は損害賠償の責任を負わなくてもよいことになります。

 今回のケースでは、出品者は運送業者に依頼し、落札者に商品の配送をしたにもかかわらず、落札者が届かないと言っていることから、運送業者は不注意がなかったことを証明できない限り、損害賠償責任を負うことになります。

 それでは、運送業者が損害賠償責任を負う場合に、出品者が落札金額まで請求できるのでしょうか。運送契約を定める商法は、迅速に大量の運送品を低

 価格で運送するため、運送依頼を受けた者を保護する規定を設け、通常考えられる損害に限定しています。

 このため、原則として、出品者が運送業者に対し、落札金額まで請求することまではできず、その商品の客観的価格しか請求できません。ただ、運送業者の悪意または重過失によって運送品が滅失したときには、運送依頼を受けた業者を保護する必要がありませんので、出品者は運送業者に落札価格まで請求できると考えられます。

 なお、その商品が高価な品物の場合には、運送を委託する際に商品名や価格を明示しておかないと、運送依頼を受けた業者は損害賠償責任を負わないこともありますので注意が必要です。

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