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2018年

市が管理する街路樹で走行中の車に傷-道路管理に瑕疵賠償も賠償も-

 神戸新聞2018年10月3日掲載
執筆者:上田 貴弁護士

 市が管理する道路に、市が植えた街路樹の枝が落ちており、走行していた私の車に当たってボンネットを損傷しました。市に対して修理代を請求することはできるでしょうか。

 この事例は、道路を管理する市の責任追及ができるかどうかという問題ですが、このような場合、国家賠償法という法律が適用されます。国家賠償法2条1項は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責めに任ずる」としています。道路などの管理に「瑕疵」が認められた場合は、国や公共団体の損害賠償責任を定めています。

 「瑕疵」とは判例上、通常あるべき安全性を欠いていることを指しており、設置または管理に欠陥があることを言います。瑕疵の有無は、①工作物(道路)に対して通常予想される危険が何か、②その危険に対して備えるべき通常の安全性が保たれているかで判断されます。

 今回の事例と同じように、市が管理する街路樹の枝が落ちて車両に損傷を与えたケースで、市が事故前に街路樹の手入れをしていたことや、市の担当者が事故現場付近の道路をほぼ毎日巡回していたことから、市による道路管理に瑕疵はないと判断された裁判例があります。

 今回の事例でも、市が道路に木の枝の落下を防ぐため街路樹の手入れをしていたかどうか、市が道路に落ちた枝を長時間放置していなかったか、という点が争点になると思われます。

 このあたりの状況は分かりませんが、例えば市民から「木の枝が落ちていて危険だ」との通報を受けたにもかかわらず、市が撤去しなかったなどの事情があれば、市に瑕疵があったと認められるでしょう。

 ただ、通常は市も街路樹の手入れをしていると考えられることから、市の道路管理の瑕疵を立証するのには相当なハードルがあると考えられるでしょう。また、仮に市の責任が認められたとしても、運転者が木の枝を避けることができたなどとして、その過失を考慮し相応の減額がなされる可能性もあります。

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