神戸新聞2018年6月6日掲載
執筆者:岩見 和磨弁護士
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修学旅行中の体験学習で、 ガスバーナーを使用している時に、 隣の子のガスバーナーが顔に当たってやけどをしました。 学校の責任は問えるのでしょうか。
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学校教育活動は多種多様で、理科の実験や体育の授業、工具を使う図画工作の授業など一歩間違えると生命、身体への危険を伴う活動も多くあります。
学校教員は、生徒を教育するにあたって生徒の生命および身体の安全を保つ義務を負うと考えられています。これは、教員や学校の安全配慮義務と呼ばれており、修学旅行などの学校行事も教育活動の一環である以上、学校や教員は生徒に対し安全配慮義務を負っています。
安全配慮義務違反が認められるかどうかは、安全配慮の対象となる児童・生徒の年齢、能力、体力、教育活動の内容などを総合的に判断します。今回の事故は修学旅行中の体験学習ですから、引率教員は生徒の集合場所や見学場所、活動の内容や場所について十分な事前調査をして、危険性の有無を確認しないといけません。また、その調査と確認に基づいて、生徒の学年、年齢や状況に応じた適切な安全指導をする義務を負います。
特に修学旅行など一大行事の際は、平常時よりも生徒が高揚しており、浮かれた気分になりがちですので、教員には普段の学校生活以上に、監視・監督の目を光らせる必要があると考えます。
今回の事故に関しては、生徒にガスバーナーを使わせるにあたって教員が事前に十分な指導をしていたか、生徒の年齢や能力の程度、ガスバーナーを過去に使った経験の有無などが問題になります。その上で、生徒間の距離をどの程度確保していたかや、使用していたガスバーナーの欠陥の有無、生徒の使用方法が予想外のものだったかといった点がポイントです。 具体的な事故の状況や事前の指導内容といった事情によって結論は変わります。しかし、これらを考慮した結果、ガスバーナーが他の生徒に当たることが予測でき、教員が事前の危険回避措置を怠ったと言える場合には、教員の安全配慮義務違反が認められ、学校も損害賠償責任を負うことになります。