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2018年

離婚する意思ないのに夫が勝手に離婚届提出-家裁に無効調停申し立てを-

 神戸新聞2018年5月2日掲載
執筆者:齋藤 悟弁護士

 私は夫と別居していますが、離婚したくはありません。今回、夫が私の名前まで勝手に書いて離婚届を出してしまったのですが、どのように対応したらいいでしょうか。

 協議離婚が成立するには、離婚を届け出た時に夫婦双方に離婚する意思があることが必要です。今回の事例では、妻の側に離婚する意思がないため、協議離婚は無効となりますが、戸籍上は協議離婚が記載されます。

 このように、離婚届が勝手に作成され届け出がなされた場合、協議離婚の記載がある戸籍を訂正するためには、まず家庭裁判所に、協議離婚無効確認の調停を申し立てる必要があります(家事事件手続法244条)。

 協議離婚無効確認調停では、当事者双方が既に届け出がなされた協議離婚が無効であるとの合意をすることができ、調査の結果、家庭裁判所がその合意を正当と認めれば、合意に従った審判が下されます。この審判を基に市町村役場に戸籍変更の申請をすれば、協議離婚の記載がある戸籍は訂正されます。

 もっとも、協議離婚無効確認調停はあくまで合意を図る制度ですので、当事者間で合意できない場合や、合意が正当と認められない場合には調停は不成立になります。

 調停が不成立に終わった際に、協議離婚の無効の確認を求めたい場合は、離婚無効確認の訴え(人事訴訟法2条1号)を提起して裁判を起こし、家庭裁判所で協議離婚が無効かどうかを審理・判断されることになります。

 以上のことから、妻が採るべき対応は、まずは協議離婚無効確認調停を申し立て、調停がうまくいかなかった場合には、離婚無効確認の訴えを提起して裁判をすることになります。

 ちなみに、今回の事例では既に離婚届が提出されていますが、勝手に離婚届を提出されることに対する事前の防御策として、不受理申出制度(戸籍法27条の2第3項)というものがあります。これは、市町村役場に行って離婚届を受理しないでほしいという申し出をすると、離婚届が出されても受理されないようになるという制度です。今回のような事態を防ぐために有効な手段ですので活用をお勧めします。

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