神戸新聞2018年3月7日掲載
執筆者:野崎 奈央子弁護士
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私の隣家の人が、自宅の庭でごみを燃やしています。ごみを燃やすことは違法ではないのでしょうか。また、洗濯物に臭いがつくのですが、損害賠償は請求できないでしょうか?
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廃棄物の焼却は、廃棄物処理法で禁止されています。「廃棄物」とはごみ、粗大ごみ、汚泥、ふん尿、廃油、動物の死がいのほか汚物や不要物で、家庭ごみもそれに当たります。
ただし、同法は例外として、風俗習慣上または宗教上の行事のためや、たき火など日常生活を営む中で行われる廃棄物の焼却で、軽微なものは認めています。このため、どんと焼きなどの地域行事やたき火、キャンプファイヤーなど、煙や臭いが近所の迷惑にならない程度の少量の焼却は許されているのです。
隣人が自宅の庭でごみを燃やしているとのことですが、家庭ごみの焼却は同法に違反します。隣人には3年以下の懲役もしくは3百万円以下の罰金、またはその両方が科される場合があります。隣人に注意してもやめてもらえない場合、警察に相談するのも一つの方法です。
もっとも隣人が時々、少量の落ち葉を燃やしている、別れた恋人の写真を数枚燃やしている程度であれば例外事由に当たり、違法とはならない可能性があります。
また、違法なごみの焼却によって、洗濯物に臭いがついた場合、民法の不法行為に基づき、隣人に対して損害賠償請求をすることも考えられます。
損害としては、洗い直しに要する水や洗剤代相当額の賠償のほか、悪臭によって窓を閉め切つた生活を強いられるなど生活上の不自由、不利益や、気分が悪くなるなどの精神的・肉体的苦痛を被っている場合は慰謝料が考えられます。 もっとも、損害賠償の可否や賠償額については、違法なごみ焼却の頻度や期間、悪臭の程度、隣家との距離、洗濯物自体の量・衣服の時価相当額など事情によりけりです。さらに、損害賠償を請求する側がこれらの状況を証明しなければなりません。これらの事情を踏まえて、お近くの弁護士に相談してください。