神戸新聞2017年11月15日掲載
執筆者:川合 秋子弁護士
-
ペットショップで犬を買いましたが、買った後に病院で、先天性の糖尿病と診断されました。売買契約の解除はできますか?また、ペットのために犬小屋などを買いましたが、損害賠償請求できますか?
-
ペットである動物の取引をする場合、売り主は、健康で病気にかかっていない動物を買い主に売る義務があります。購入した動物が病気にかかっていた場合、買い主は売り主に対し、売買の目的物に隠れた「瑕疵」があることを理由として、売買契約の解除や損害賠償請求をすることができます。
瑕疵とは、目的物が本来持っておくべき性質を備えていないことであり、ペットの取引では、健康であるべきペットが病気を持っていることは隠れた瑕疵に当たります。契約が解除された場合には、売り主は、買い主に対し、売買代金を返還しなければなりません。
今回のケースでは、買った犬は先天性の糖尿病であり、売買の時点で病気があったといえるので、買い主は、売り主に対して、売買契約を解除し、代金の返還を求めることができます。
犬小屋については、売買契約に瑕疵がないと信じて購入し、契約を解除せざるを得なくなったことで無駄になったわけです。このため、動物の売り主に対し、購入費用の損害賠償請求をする余地があります。ただし、賠償を受けた場合、犬小屋は、動物の売り主に引き渡す必要があります。購入代金の賠償を受けて、犬小屋も持ち続けることになると、二重に利益を得てしまうからです。
また、ペットの売買においては、売買契約書に、いかなる場合でも契約解除はできないなどの条項が定められていることがありますが、売り主が事業者、買い主が消費者(個人)の場合、事業者の責任を免除する条項や、民法よりも消費者の利益を一方的に害する条項は無効であるとされていますので、上記の条項も無効と判断される可能性があります。
従って、このような条項がある場合でも、一度、弁護士に相談することをお勧めします。