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2017年

水はけ悪い賃貸住宅修繕して欲しい-転倒の危険と貸主に要求を-

 神戸新聞2017年11月1日掲載
執筆者:三宅 勇気弁護士

 私が住んでいる賃貸マンションのエントランスは、水はけが悪いため雨が降ると水がたまり、大変滑りやすく、子どもが滑って転ぶこともあります。危険なので修繕を求めたいのですが、可能でしょうか?

 貸主は賃貸借契約上、借り主に賃貸物件を使用させる義務を負い、借り主に安全に使用させる義務も含まれます。さらに、貸主は借り主に賃貸物件を使用させる上で必要な修繕をする義務を負い(民法606条1 項)、借り主は貸主に代わって修繕した場合、修繕費用を「必要費」として直ちに支払うよう請求することができます(民法608条1項)。なお、特約によって、貸室内の修繕のうち一定の範囲を借り主の負担とすることはありますが、共用部分であるエントランスの修繕を借り主に負担させることは想定しにくく、仮にそのような特約があっても、通常は消費者契約法などで無効になると思われます。

 本件では、 降雨時にエントランスに水がたまり、転倒の危険があるとのことですので、相談者は貸主に、危険防止のための修繕を求めることができ、貸主が応じなければ、必要に応じて修繕し、それに要した費用を貸主に請求することもできます。

 ただ、相談者が修繕を行う場合、貸主との間で、修繕の要否、内容、費用をめぐってトラブルが生じる恐れがあります。事前に修繕の内容と費用が分かる書面(見積書など)を提出した上で、一定期間内に修繕を了承するか代替案を提示するよう求めるなど手順を踏み、その経過を記録するようお勧めします。

                                                                                                                                                          一方、貸主が修繕をしないうちに転倒事故が起きた場合、貸主の損害賠償責任が間題となります。降雨時に水たまりができ、滑りやすくなるエントランスは、安全性を欠いているといえます。にもかかわらず、貸主が修繕義務を怠ることは債務不履行(民法415条) に当たり、転倒の危険が解消されることなく放置されているエントランスは、「設置または保存に瑕疵(かし)がある」「土地の工作物」(民法717条1項)といえます。 従って貸主は、債務不履行(貸主としての契約責任) または工作物責任(所有者としての不法行為責任)に基づき損害賠償貴任を負うことになります。

 

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