くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2017年

妻が勝手に夫名義で借金-生活費目的なら夫も返済義務-

 神戸新聞2017年9月20日掲載
執筆者:鳥山 直美弁護士

 私の妻が、勝手に私名義でカードローンを組んで、消費者金融からお金を借りていました。 妻は生活費に使ったと言っていますが、私が返済しなければならないのでしょうか?

 勝手に他人名義でカードローンを組んだとしても、その契約は無効であり(民法113条)、名前を使われた名義人は、何か落ち度がないかぎり、何も責任を負わないのが原則です。

 しかし、夫婦の一方が第三者との間で結んだ契約について、民法は「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯して責任を負う(761条)」として、例外規定を定めています。

 これによると、妻が日常生活のために必要な借金をしたり、日常品を購入したりした場合は、たとえ夫が承諾していなかったとしても、夫は妻と一緒に責任を負わなければなりません。

 ただし、民放761条は、「日常の家事に関する」取引についての規定ですから、日常生活とは無関係の取引、例えばギャンブルのための借金などには適用されません。

 そして、夫婦の一方がした取引が、この「日常の家事に関する」ものにあたるかどうかは、判例によると、その取引をした人がどう考えていたかという主観的要素だけではなく、取引の種類や性質という客観的な要素も加えて判断されます。

 今回のケースでは、妻は生活費のために、夫に無断で夫名義のカードローンを組んだと主張しています。冒頭で述べた通り、たとえ夫婦間でも、妻が夫に無断で組んだ夫名義のローン契約は無効となるのが原則です。

 しかし、夫婦の日常生活に必要な取引については、夫婦は連携して責任を負いますから、妻の主張通り、妻が本件のカードローンを「生活費のために」組んだのであれば、夫も例外的に、ローンの返済義務を負うことになります。  もっとも、妻が生活のためと説明しているものの、よく調べてみると、高価なブランド品の購入やギャンブルなどのためにお金を借りていた場合、そのような借り入れは「日常の家事に関する」ものにはあたらず、原則通り、夫の返済義務はないと言えるでしょう。

 

この記事をSNSでシェアする