神戸新聞2017年8月16日掲載
執筆者:乗鞍 佳孝弁護士
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私の土地の側溝に、隣の畑から雨水とともに土が流れて来て困っています。隣の畑から雨水と土が流れて来ないように、工作物を設置しても問題ないでしょうか?
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法律では、土地の所有者は、隣地から水が自然に流れて来るのを妨げてはならないと規定しています(民法214条)。この場合は、流水を認めなければならず、水が流れて来ないように工作物を設置することは、基本的に許されないといえます。一方、水が「自然に」流れて来るのではない場合は、この規定の対象になりません。一般的に、人工設備によって水が流れて来るケースとしては、隣地の地盛りのため、土地の高低に差が生じたことで水が流れて来るようになった場合などがあります。
しかし、他方で法律は、土地所有者は、所有地の水を通過させるため、他人の設けた工作物を使用できるとも規定しています(民法221条1項)。「側溝」も工作物に当たるため、結局、隣地所有者があなたの側溝を使用して水を流すことは、認めざるを得ない可能性があります。ただ、その場合は、隣地所有者に側溝の設置や保存費用の分担を求めることができます(民法221条2項)。
なお、水に土が混ざっていても、その量が地面を流れる水に含まれる土として常識的な範囲の量にとどまる場合は、やはり以上のような考え方が当てはまるといえるでしょう。
一方、混ざっている土の量が異例といえるほど多く、あなたの土地に損害が生じているような場合は、流水を認めたり、側溝を使用させたりする必要はないと考える余地もあります。
ただし、そのように考えられる場合でも、工作物を設置して勝手に水をせき止めるといった行為は、法的な手続きなどを経ず一方的に状況を変更してしまうことになります。さらに、他の土地に水の滞留による損害を生じさせる危険もあり、違法行為と判断される恐れがありますので、よほどの緊急事態でない限りしない方がよいでしょう。
隣地所有者に、水や土の流出を止めるための設備の整備を要請するなど対処を求めるのが適切と思われます。