神戸新聞2017年6月21日掲載
執筆者:森岡 由見子弁護士
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私は,夫の母親と共有名義で不動産を持っています。このたび,夫と離婚することになり,不動産も使用しないため,売却したいのですが,どうすればよいでしょうか?
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共有名義の不動産は共有者の同意なく売却できないので,共有者に対し,共有関係の解消を求める共有物分割請求(民法256条1項本文)をします。
共有物分割の方法としては,①現物分割(不動産そのものを分ける)②価格賠償(共有者の一人が不動産を単独所有し,他の共有者に代償金を支払う)③換価分割(共有不動産を売却し,その売却代金を共有者で持ち分割合に応じて分配する)―があります。共有物分割にあたっては,まず共有者間で協議をします。協議の場合は分割方法を自由に選択できます。合意内容は書面化しましょう。
共有者間で意見が対立し,協議がまとまらない場合は,訴訟提起をすることができます(民法258条1項)。裁判所が分割方法を選択する基準は,①現物分割が基本ですが,共有者のうち単独所有を希望する人がいる場合,最高裁の1996年10月31日判決によれば,一定の要件(相当性,価格の適正な評価,支払能力,実質的公平性など)を満たす場合には,②価格賠償が可能になります。
単独所有を希望する人がおらず,①現物分割が不可能か著しい価格減少を招く場合には,③換価分割をします(民法258条2項)。判決による換価分割では競売になり,比較的低い金額で売却される恐れがあるので,和解し,不動産仲介業者を通じて売却することもあります。 今回のようなケースで,不動産を2人とも使用しない場合は③換価分割の方法で,夫の母親が使用する場合は②価格賠償の方法で合意できるか協議しましょう。合意できず,訴訟になった場合には,2人とも不動産を使用しないなら①現物分割が基本ですが,建物などで現物分割が不可能な場合は③換価分割となります。なお,相談者の共有持ち分が,夫婦の財産によって取得されたものであれば,実質的な夫婦共有財産として財産分与の対象となりますので,夫とも話し合ってください。