神戸新聞2017年5月17日掲載
執筆者:赤松 修明弁護士
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専業主婦で夫と3人の小学生の子どもと暮らしています。今回、交通事故に遭い、頸椎捻挫で6カ月間通院しました。治療中、首の痛みや頭痛で家事ができなかったのですが、それに伴う損害は請求できますか?
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交通事故でけがをした場合の損害額は、いくつかの損害項目を個別に算出し、それらを合算して算出されます。損害項目は、治療費、通院交通費、入通院慰謝料、休業損害などがあります。
「休業損害」とは、事故による損害のため休業したり、十分に就労ができなくなったりして、治癒までの間に、本来得られたはずの利益を得られなかったことによる損害を意味します。
事故前の収入を基礎として現実の収入減を補償するものであり、休業に限らず、遅刻、早退、労働力の低下などにより喪失した収入減も含まれます。例えば、給与所得者の場合、事故前の現実の給与額(前年度の源泉徴収票や給与明細書などを参照)を基に、けがによる欠勤のために喪失した給与額を算定します。
では、相談者のように、専業主婦で算定の基となる現実の収入がない場合、休業損害は認められないのでしょうか。答えは、認められます。一般的に家事労働は、業者ら家族以外の第三者に頼めば、一定の報酬を支払わねばなりませんが、家族関係があるため、無償で行われていると考えられます。
そのため、家事従事者は、報酬相当の利益を家族のために確保しているとして、家事労働による金銭的利益を得ていると見なされます。従って、現実の収入は無くても、けがのため家事に従事することができなかった期間については、休業損害が認められます。この場合、算定の基礎となる収入額は、女性労働者の平均賃金額を基に算定されることが多いです。
相談者の場合、頸椎捻挫で6カ月間通院しています。その間、首の痛みや頭痛で家事ができなかったこと、子どもは小学生であり家事の手伝いは困難であることを考えると、家事に従事することができなかった期間については、休業損害を請求できることになります。弁護士にご相談ください。