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2017年

会社の上司から毎日長時間叱責される-パワハラかどうか個別に判断

 神戸新聞2017年4月19日掲載
執筆者:小原 良子弁護士

 現在、会社の上司から無理な売り上げ目標を出され、毎日のように長時間、叱責を受けています。パワハラで訴えたいと思いますが、どのような場合がパワハラに当たるのでしょうか?

 パワハラは、法律上の定義はありませんが、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為と厚生労働省は定義づけています。

 具体的には①暴行、傷害②脅迫、侮辱、③仲間外し、無視④過大な要求(達成不可能なノルマを課すなど)⑤過小な要求(仕事を与えないなど)⑥私的なことに過度に立ち入るなど―はパワハラに該当します。④から⑥については、教育、指導との線引きが難しい面もあります。

 パワハラに該当するか否かは、上司、部下の主観ではなく、行為が行われた状況や継続的であるかどうかを考慮した上で、業務の適正な範囲かどうかを客観的に判断し、適正な範囲を超えている場合にはパワハラに該当し、違法と判断されます。

 今回の相談者は、無理な売り上げ目標を課されているとのことですが、その要求が社会通念から見て客観的に過度な要求であるか否か、また叱責されている状況、具体的な叱責内容(プライベートに踏み込んだ内容、人格を否定するような内容かなど)、叱責時間などによってパワハラに該当するかを判断することになります。

 このようにパワハラに該当し、加害者に法的責任を問えるかどうかは、個別具体的に判断されますので、弁護士に相談することをお勧めします。

 雇用主は、従業員に良好な環境で労務を提供させる配慮義務を負っていますので、パワハラがあった場合、同義務違反によって、民事責任を負う可能性があります。また、加害者自身も、民事責任だけでなく刑事責任を負うこともあります。さらには、職場の秩序を乱したとして、会社から懲戒を受けることもあります。

 パワハラは、人の精神をむしばむ人権侵害行為であり、決して許してはならないものです。皆さんの職場が働きやすい環境になることを切に願います。

 

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