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離婚した夫に娘を会わせたくない-正当な理由なく妨害できず-

 神戸新聞2017年3月1日掲載
執筆者:三好 貴将弁護士

 私は、夫の不倫が原因で離婚、10歳の娘と暮らしており、親権もあります。現在1カ月に1度、娘が夫と会っています。会わせたくありませんが、そうすると、私に何か不利益があるのでしょうか?

 夫婦が別居したり離婚したりした後、子どもを監護・養育していない親が、子どもと会ったり、手紙や電話などで交流したりすることを「面会交流」といいます。

 面会交流は、一方の親と子どもが、別居や離婚によって別々に生活している場合でも、両者が面会し交流する機会を設けることによって、子どもの健全な育成を促すことを目的にしています。民法では、夫婦が離婚するときは、父親または母親と子どもとの面会、その他の交流について定めるとされ、子どもの利益を最も優先して考慮しなければならないとされています。

 相談者は、娘を夫に会わせたくないと考えていますが、裁判所の調停や審判、判決によって面会交流の条件が決定されている場合、夫は裁判所に対して履行勧告を申し立てることができます。履行勧告は、裁判所を通じて面会交流の実現を促す手続きで、強制的に面会交流を実現する効力はありません。

 また、夫は裁判所に対して、強制執行を申し立てることもできます。強制執行の方法として、無理やり子どもを引き連れてくることは認められていません。面会交流に応じない者に、一定の金銭を支払うことを命じることによって、間接的に面会交流を促すことになりますが、その際には面会交流の条件が具体的に定められていることが必要となります。

 ただ、親権者・監護者としての適格性を判断する際、面会交流に対する寛容性が考慮されることがあります。娘を夫に会わせないことに正当な理由がない場合、夫は相談者が親権者・監護者として不適任であるとして、その変更を裁判所に申し立てることができます。裁判所の判断次第では親権者・監護者が相談者から夫に変更される可能性もあります。

 加えて、正当な理由もなく面会交流を妨害すると、相談者は夫に対し損害賠償として慰謝料の支払い義務を負う可能性もありますのでご注意ください。

 

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