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2017年

「必ずもうかる」と説明 証券取引で多額の損失-証券会社に義務違反の疑い-

 神戸新聞2017年2月15日掲載
執筆者:重村 禎昭弁護士

 私は75歳の専業主婦で証券取引経験がありませんでした。亡夫が取引していた証券会社から「必ずもうかる」と言われ、指示通り何十回も取引し、1年間で約4千万円の損失が出ました。自己責任と諦めざるをえないのでしょうか?

 自己責任を問われるのは、証券会社からリスクについて説明を受け、理解した上で取引を行った場合です。証券会社は、顧客が自己責任で判断できるよう、取引のリスクを顧客が具体的に理解できる説明を行う必要があります(説明義務)。

 また、高齢の方に危険な取引を勧誘することも問題です。証券会社は、勧誘に際し、その顧客が金融商品の性質に照らし、十分な知識、情報収集・分析、判断能力、経験、財産を有しているか、顧客の投資目的に沿っているかを調査し、これらが十分でない場合や、投資目的と異なる金融商品を勧誘することとなる場合は、勧誘自体が禁じられます(適合性原則)。

 これまで取引経験のない相談者が、4千万円もの損失が出るほどの取引を行う知識や経験などを有していたとは考えにくいでしょう。また、投資目的に沿っていたかも疑問です。「適合性原則」「説明義務」の違反が疑われます。また、「必ずもうかる」という説明は、「断定的判断の提供」に当たります。

 さらに、違法な「過当取引」の可能性もあります。過当取引とは、証券会社が顧客の口座を支配し、信頼を乱用し、証券会社の利益を図ることを目的として、顧客の口座の性格、金額、回数に照らし、過度な取引を行わせることです。

 証券会社にこれらの義務違反があると認定されれば、株式取引の損失も、証券会社に対する損害賠償請求などで取り戻すことが可能です。投資被害に遭われた方は、お近くの消費生活センターや弁護士会にご相談ください。