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亡くなった妻の貯金と借金、どうすれば-限定承認や相続放棄の選択も-

 神戸新聞2017年2月1日掲載
執筆者:仲川 悦央弁護士

 先日、妻が亡くなりました。妻には貯金もありますが、多額の借金があります。私は今後、どのような手続きを取ったらいいですか?また気を付けることはありますか。

 相談者は、相続により、奥さまの貯金を含む財産とともに借金も引き継ぐのが原則です。ただ、借金の相続による過大な負担を避けるために限定承認や相続放棄を選択できます。

 財産に比べて借金の方が多いことが明らかな場合は、相続放棄が有効です。相続放棄をすると、相談者は、初めから相続人でなかったものとみなされ、奥さまの財産を引き継がない一方、借金も引き継ぎません。

 相続放棄を選ぶ場合は、奥さまが亡くなり、相談者が奥さまの相続が始まった事実を知ってから3カ月以内に家庭裁判所に必要書類を提出してください。ただ、家庭裁判所で必要書類がいったん受理されると、原則として取り消すことができませんので注意しましょう。

 もっとも、3カ月以内に相談者が奥さまの相続財産の状況を調査しても、相続放棄するか決定できない場合には、家庭裁判所に対し、期間の伸長の申し立てをすることができます。

 また、3カ月以内に手続きをしなかったとしても、遺産状況を把握できなかったなどの相当な理由があれば、相続放棄が認められる場合もありますので、弁護士にご相談ください。

 一方、財産に比べて借金が多いかどうか明らかではない場合は、限定承認が有効です。限定承認すると、相続した財産の範囲内で借金を返済し、余りがあれば相続できます。限定承認を選択する場合は、相続が始まったことを知ってから3カ月以内に相続人全員で家庭裁判所に必要書類を提出してください。家庭裁判所に対し、期間の伸長の申し立てができることは、相続放棄の場合と同じです。なお、3カ月経過前に相談者が奥さまの財産を処分した▽限定承認や相続放棄をしないまま3カ月が経過した▽限定承認や相続放棄をした後に財産を隠したり、使ったりした―などの場合、相続により、奥さまの貯金を含む財産とともに借金の引き継ぎを全面的に認めたとみなされますので、気を付けてください。

 

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