上司の不正行為を知ってしまった-告発での解雇が無効の場合も 神戸新聞 2015年11月4日掲載
Q:勤務先の上司が不正行為をしていることを知ってしまいました。どう対処すればよいでしょうか。
A:内部通報によってリコール隠しや食品偽装表示問題が明るみに出たり、東芝の不正会計が話題になったりしています。
公益通報者保護法は2004年に成立、2006年に施行されました。公益通報(内部告発)をしたことを理由とする解雇の無効や、公益通報に関し事業者・行政機関が取るべき措置を定めることにより、公益通報者の保護と事業者の法令順守を図り、国民生活の安定、社会経済の健全な発展に資することを目的とするものです。
この法律によって保護されるための要件は、①労働者が②不正の目的でなく③通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしていることを、一定の者に通報した場合に適用されます。一定の者とは、事業者内部、監督行政機関、その他の外部の者をいいますが、後者になるほど保護の要件は厳しくなります。
事業者内部に通報する場合は、①~③の要件を満たせば保護が適用されますが、監督行政機関に対して通報する場合は、③の「通報対象事実が生じ、またはまさに生じようとしている」と信ずるに足りる相当の理由が必要となります。
また、外部へ通報する場合には、労務提供先や行政機関に通報すれば、解雇などの不利益処分を受ける恐れがあるか、証拠が隠滅、偽造される恐れがある▽労務提供先や行政機関に通報しないことを要求された▽書面により労務提供先に通報後、20日を経過しても調査を行うという通知がない、または調査しない―などに適用されます。
もっとも、これらの要件に合わなくても、一切保護されないわけではなく、ほかの法律により保護される場合はあります。
以上より、まず事業者内部や監督行政機関への通報を考え、これらに通報すると不都合があって前述の要件を満たす場合には、消費生活センター、国会議員、マスコミなどの外部の者に通報してはどうでしょうか。分からない点があれば、兵庫県弁護士会にご相談ください。