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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2015年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

自己破産前に自宅を妻に贈与できるか-債権者や管財人が認めず 神戸新聞 2015年2月18日掲載

執筆者:池田 雄一郎弁護士

Q:知人の会社が倒産しました。私は会社の借入金を連帯保証していたのですが、到底支払える金額ではありません。今後、自己破産を考えているのですが、その前に自宅を妻に贈与してもいいでしょうか。

A:問いのような状況で自宅を奥さんに贈与すると、①債権者から贈与を取り消される②破産手続きが開始した後に破産管財人から贈与を否認される-のいずれかになるでしょう。
①は民法424条1項の詐害行為取消権という債権者の権利です。同項は「債権者は債務者が債権者を害すると知ってした法律行為の取り消しを裁判所に請求することができる」と定めています。
問いの場合、債権者は、家の所有権が奥さんに移ると差し押さえできなくなってしまいます。相談者は財産隠しの意図で自宅を贈与しようとしていると思われます。このような行為は債権者を害すると知ってした行為といえるでしょう。
ただ、奥さんが相談者の借金を知らなかった場合でも自宅を返す必要があるならば酷です。民法424条1項ただし書きは「債権者を害すべき事実を知らなかったとき」は取り消しが認められないとしています。
問いでは、妻は通常、夫の借り入れを知り得る立場にあり、夫が自宅を妻に贈与するという事実自体から、奥さんが債権者を害することを知っていたと推測されるでしょう。
一方、②は破産法160条3項の無償行為否認という制度です。①との違いは、否認権は破産手続きの中で裁判所から選任された破産管財人が行使するという点です。また、相談者が債権者を害すると知っていたかどうか、奥さんが相談者の借り入れを知っていたかどうかは問われません。無償行為否認は支払いの停止などがあった後、またはその前6カ月以内の行為に限定されます。否認が認められた場合、自宅が破産管財人の管理するところとなり、破産管財人によって売却され、債権者に配当されることになります。
どのような行為が詐害行為に当たるか、破産手続き内で否認されるのかは、さまざまな要素を考慮して決められます。特に、借り入れのある方で大きな財産を動かされる場合には、弁護士会や弁護士にご相談ください。