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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2013年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

中古住宅売り主の瑕疵担保責任-特約は無効になる場合も 神戸新聞 2013年5月21日掲載

執筆者:上原 隆志弁護士

Q:不動産業者から築10年の中古住宅を購入して住み始めたところ、深刻なシロアリ被害が生じていることが分かりました。
 ただ、契約書には瑕疵担保責任は負わないとの特約があります。法律的な請求はできないでしょうか。

A:購入したものに、普通の人の注意では発見できない欠陥(法律上は「隠れた瑕疵」といいます)があったとき、買い主は民法の規定により、売り主に対して欠陥、すなわち瑕疵によって生じた損害の賠償を請求できるとされています。また、瑕疵のために契約の目的を達成できないときは、契約自体の解除も認められています。このような制度を売り主の瑕疵担保責任と呼びます。
 今回の事例では、購入した住宅にシロアリ被害があったことは「隠れた瑕疵」にあたりますので、買い主は、売り主の瑕疵担保責任を追求して、損害賠償などを請求したいところです。
 もっとも、契約の当事者が瑕疵担保責任を負わないという特約を結んでいた場合、買い主は、売り主が瑕疵のあることを知りながら黙っていた場合を除き、原則として売り主の瑕疵担保責任を追求することはできません。
 では、このような特約があれば、売り主は常に責任を負わなくても良いのでしょうか?
 宅地建物取引業法では、宅地・建物の購入者の利益を保護するため、宅地建物取引業者が自ら売主となって宅地・建物を販売する場合、瑕疵担保責任について、民法の規定よりも買い主に不利な特約は無効とされています(ただし責任を負う期間を引き渡しから2年以上とする特約は例外的に有効です)。
 今回のケースでも、住宅を不動産業者から購入したのですから、宅地建物取引業法の規制が適用されます。従って買い主は、特約は無効であるとして、不動産業者に対し、瑕疵担保責任を追求して損害賠償などを請求することができます。