遺産分割を平等にしたい-可能だが、税金面で注意を 神戸新聞 2012年7月3日掲載
執筆者:森川 拓弁護士
Q:亡くなった父が、遺産の大部分を長男である私に相続させ、残りを他の兄弟に-との遺言をし、亡父の友人が遺言執行者になりました。私としては、他の兄弟との関係が悪くなると嫌なので、平等に遺産分割したいと思います。可能でしょうか。
A:遺言執行者とは、遺言者に代わり、遺言内容の実現に必要な一切の事務を行う者で、遺言などにより選ばれます。本来、相続人の意向に関わりなく、遺言を執行(遺言内容を実現)しなければなりません。また、相続人は、勝手に遺産を処分できません。
ただ、相続人全員が遺言と異なる遺産分割を望む場合、その遺産分割の方が現実的には妥当であったりします。さらに、遺言執行を終えた後、相続人間で新たな遺産の配分をすれば、遺言と異なる遺産分割を認めたのと同様の結果になってしまいます。
そこで、相続人全員が遺言と異なる遺産分割を望み、かつ遺言執行者がそれに同意する場合には、そのような遺産分割も有効であるとされています。ただし、遺言執行者には、遺言と異なる遺産分割に同意する義務はありませんので、同意・不同意の判断は、遺言執行者次第です。
なお、遺言執行者が同意しない場合、遺言執行者を無視して相続人間で遺産分割することも考えられますが、後日、そのような遺産分割は無効とされる可能性があります。
注意すべきは、税金面です。遺言と異なる遺産分割を行うということは、遺言により一旦変わった権利関係を、相続人間の合意で、再び変えたことになるとも考えられます。つまり、相続後にあらためて贈与などを行ったとみられる可能性があります。その場合、贈与税などの支払いが必要と指摘されるかもしれません。事前に弁護士、税理士と相談した上で手続きをすすめるべきと思います。