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くらしの法律相談(2008年-2016年)

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2011年 神戸新聞掲載『くらしの法律』相談

賃貸借契約~敷引特約などは有効と判断~ 神戸新聞 2011年8月2日掲載

執筆者:山本 真史弁護士

Q:私が借りる家賃月10万円のアパートの契約書には、契約の更新時に家賃1カ月分の更新料を支払う条項や
退去時に敷金20万円から10万円を差し引く敷引特約があります。このような規定や特約は有効ですか。

A:いずれも、有効と判断される可能性が高いでしょう。
 家主と借り手が交わす賃貸借契約には、消費者契約法が適用されます。
同法は
(1)法律の規定を適用する場合よりも消費者(ここでは借り手が該当します)の義務を加重する
(2)信義則に反して消費者の利益を一方的に害する規定は無効であるとしています。
 更新料条項や敷引特約はいずれも借り手の義務を加重するものですので(1)は満たすでしょう。
そこで、これらが(2)の消費者の利益を一方的に害するといえれば、これらは無効になります。
 最高裁は次のように判断しています。
 まず、更新料には家賃の補充ないし前払い、契約継続の対価などの趣旨を含む複合的性質があり、
合理性があるとしました。その上で、更新料条項が契約書に一義的かつ具体的に記載され、家主と借り手間に
更新料支払いに関する明確な合意がある場合、更新料が高額過ぎるなどの特段の事情がない限り、
(2)消費者の利益を一方的に害するとはいえないと判断しました。
そして、更新料を家賃2カ月分とし更新期間を1年間とする更新料条項を有効としました。
 また、敷引特約についても、借り手がこれを明確に認識して契約したのであれば、敷引金の額が家賃の
額などに照らし高額過ぎるなどの特段の事情がない限り、(2)の消費者の利益を一方的に害するものでは
ないとして、敷引金が賃料の3.5倍については高額すぎるとはいえないとしています。
 敷引金が高額かどうかは、家賃や近隣建物の賃貸借契約に記された敷引特約の敷引金の相場などから
判断されることになりますが、相談者の場合、敷引金が家賃1か月分ですので有効と判断される可能性が
高いでしょう。