隣の子どもの火遊びで火災-親の監督に過失なかったか 神戸新聞 2011年3月1日掲載
Q:隣に住む小学2年の子どもが親の留守中に同級生とライターで遊んでいたところ火事になり、私の家も被害を
受けました。
隣家の親に対して損害賠償を求めることはできますか。
A:故意・過失により他人に損害を加えた者は、その損害を賠償する責任を負います。
これを不法行為責任といいます。
ところが、他人に損害を加えた者が未成年でありかつ「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」を
備えていなかったときは、その者は損害賠償責任を負いません。
通常、小学2年程度では「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」が備わっていないと判断されます。
この場合、子どもの代わりに、その監督責任者である親が損害賠償責任を負担することになります。
もっとも、親は、子どもをしっかりと監督し、過失がなかったことを証明することで損害賠償責任を免れることが
できます。
以上が民法の原則ですが、民法とは別に失火責任法があり、失火による不法行為について特則を
定めています。
過失により火事を発生させるなど、失火で他人に損害を加えた場合、それが単なる過失ではなく、
重過失による場合のみ不法行為責任が成立します。
これを子どもが失火により他人に損害を加えた場合に当てはめると、当該子どもの親は、子どもの監督について
重過失がなかったことを証明することで損害賠償責任を免れることができるのです。
重過失の有無については、判断は難しいですが、例えば、日頃から子どもがライターなどで火遊びをするという
危険性を認識しながら、それを注意するなどの指導を何らしてこなかった上、ライターを子どもの手の届く場所に
置いたまま留守にしたなどの事情があれば、重過失が認められるものと思います。
つまり、本件への回答は「隣家の親が、子どもの監督について重過失がなかったことを証明しない限り、
隣家の親に損害賠償を求めることができる」と結論づけられます。