財布の拾得物-返還1カ月以内なら「報労金」も 神戸新聞 2010年7月20日掲載
Q:20万円が入った財布を拾い、警察に届け出ました。その後、落とし主が現れたと聞きましたが、
その人からは2カ月以上、何の連絡もありません。
私は何か請求できるのでしょうか。
A:落とし物を拾った人とその持ち主との関係は、法的には「事務管理」という関係にあると考えられています。
事務管理とは、例えば留守中の隣家の屋根が台風で壊れているのをみつけて、
親切心からそれを直してあげた場合のように、義務がないのに他人の事務を処理することをいいます。
さて、他人の事務を処理してあげた人は、事務処理にかかった
費用(先ほどの例でいえば屋根の修理にかかった費用)のほかに、報酬を請求することができるでしょうか。
事務管理の一般ルールを定める民法は、これを認めていません。
他人の事務を処理してあげた人からすれば、少しくらい報酬が認められてもいいとも思えるのですが、
民法は、事務処理された他人の立場に立つと、いくら自分のために事務処理してもらったといっても、
頼んでもいないことに対して報酬まで支払う必要はない、と考えているのでしょう。
ただし、遺失物法という法律では、特別に落とし物を拾ってくれた人に対して「報労金」を支払うことを
定めています。
具体的には、落とし物の価格の5%以上20%以下の報労金を支払うことになります。
ただ、残念なことに、遺失物法は、落とし物が持ち主に返されてから1ヵ月を経過したときは、
報労金を請求することはできないとも定めています。
したがって、落とし主が見つかってから2ヵ月以上経った今回の事例では、あなたから報労金を請求することは
難しいでしょう。
なお、遺失物法によれば、落とし物を拾った人は、速やかにそれを警察署長に提出しなければなりません。
その上で、原則、警察署長に届け出てから3ヵ月以内に落とし主が現れなかった場合には、
落とし物の所有権が、 落とし主から落とし物を拾った人へと移ることになります。