「車同乗中の事故-双方の運転手に賠償請求可能」神戸新聞 2007年8月7日掲載
執筆者:野上 真由美弁護士
Q:知人の運転する車に同乗中、事故に遭いました。知人が交差点を右折しようとして、対向車線の車と衝突したもので、知人の過失が大きいようです。私は大けがを負い、相手の車の運転手に賠償を求めたのですが、「過失の大きい知人に賠償してもらえ」の一点張りです。そうすべきなのでしょうか?
A:結論から言えば、あなたは知人に損害賠償を請求することが「できます」が、必ずしも知人に請求「しなければならない」というわけではありません。自動車同士の交通事故で、双方の運転手に過失があり、あなたのような同乗者が被害にあった場合、交通事故を起こした両運転手は、共同してあなたに損害を与えた共同不法行為をしたことになります。
このようなケースでは、どちらの運転手に対しても被害の全額を請求することができます。ですから、あなたは両者、あるいはどちらか一方の運転手に損害賠償請求すればよいということになります。ただし、両者に請求しても2倍の賠償額が得られるわけではないことに注意してください。
また、あなたが相手の運転手に損害賠償請求をしたとき、知人の過失が「過失相殺」され、知人の過失割合により賠償額が減額されることがあります。ただ、判例からすると、ここでは知人の過失は過失相殺の対象とならない可能性が高いでしょう。
これに対して、あなたが知人に損害賠償請求すると、知人はあなたを無償で好意により乗せていたという好意同乗を理由に、賠償額の減額を主張する可能性はあります。しかし、現在では、一緒に飲酒した上で同乗したなど被害者自身が事故発生の危険が大きくなるような状況をつくったときや、定員超過など事故発生の危険が極めて高い事情を知りながら同乗するなどの特別な事情がなければ、原則として好意同乗を理由に賠償額を減額されることはありません。