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2006年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「口頭での保証契約-民法改正後は成立せず」神戸新聞 2006年9月19日掲載

執筆者:嘉藤 憲暁弁護士

Q:先日、弟の運転する車が車同士の衝突事故を起こしました。弟は一方的に非があるものの、任意保険に未加入。同乗の私はその場で相手方に、弁償金を、弟に支払わせるか、私が保証すると、口頭で約束しました。弟が支払わない場合、私に修理費用を弁償する義務はありますか。

A:この件では、弟が本来負うべき債務(修理費用弁償義務)をこの方が保証したということになります。問題は、この方が、相手方と口頭で約束しただけなので、相手方との間に保証契約は成立せず、修理費用を支払わなくてよいのではないかということだと思われます。

この点ですが、民法上、契約当事者双方の合意さえあれば、契約書などが作成されなくても、契約は成立し、その後、当事者は契約の効力に拘束されるのが原則で、保証についても、当事者の合意で契約が成立することとされていました。

しかしながら、2004年12月の民法改正により、保証契約で実際に負担することになる責任の重さに鑑み、保証契約はすべて書面をもって締結しなければならないこととなりました(改正民法446条2項)。

今回の件についてみると、この方と相手方の間で保証契約は書面によらず、口頭でなされただけですので、保証契約は成立しておらず、この方には、弟が相手方に支払うべき自動車の修理費用を弁償する義務はありません。

ところで、保証というと、主債務者が支払いさえすれば、自分は支払わなくていいという、二次的なものと思われがちですが、保証債務は保証契約締結時に債権者と保証人の間で有効に成立し、主債務者が支払わない時に始めて発生するものではありません(連帯保証であると保証人にいきなり請求することも可能です)。

実際に、債権者は主債務者の資力より、保証人(実際には連帯保証人がほとんど)の資力をあてにして契約し、保証人に請求してくる場合が多いのです。

このように、保証人は現実に履行を求められることが多いのに、保証債務は二次的な債務であるとの誤解から、無償で人情や義理に基づいて保証契約を締結することが多かったため、改正民法では書面を保証契約の成立要件とすることによって保証人に注意を喚起し、保証契約を締結するかどうかの判断を慎重にさせようとしているのです。