「お金を貸す-借用書や保証契約書を作成」神戸新聞 2006年7月18日掲載
執筆者:村田 吾郎弁護士
Q:知人から、事情があって50万円を貸してくれないかと言われています。貸してあげようと思いますが、よく知っている人だし、その知人のお父さんはとても裕福な方なので、借用書は作らなくても大丈夫ですよね。
A:あなたのケースでの問題点は二つあります。一つは、人にお金を貸す時に借用書を作るべきか、二つ目は、知人の父親の存在をどうとらえるかです。
まず、一つ目の問題点については、借用書を作成すべきです。知人が後でお金を返してくれれば何の問題も生じません。ただ、どんなに親しい間柄でも後から「何のことか分からない」「あのお金はもらったものだ」と言い、お金を返さないことはあり得ます。
このような場合あなたから裁判などをする必要が生じ、裁判では(1)あなたが知人に50万円を渡したこと(2)あなたと知人の間でお金を返す約束があったことを証明しなければなりません。そして(1)と(2)を証明するには、書面によって証明するのが最も確実な方法であるといえます。
裁判においては、単なる口約束があったというだけでは相手が認めない限り「お金を返してもらう権利」は認められないと考えた方がよいでしょう。(1)の点を証明する書面としては振込明細書・受領証が考えられ、(2)の点を証明する書面が借用書になるでしょう。借用書には少なくとも日付、誰からいくら借りるのか、およびきちんと返済する旨を記載し、知人に署名・押印(実印を押してもらえば万全でしょう)してもらう必要があります。
二つ目の問題点については、あなたが知人との間で借用書を作成しても、それはあくまであなたと知人との間の契約であって、知人の父親に対しては何の拘束力もありません。すなわち、そのままではあなたには知人の父親に代わりにお金を返してくれと言える権利はないことになります。
確実にお金を返してもらうためにも知人の父親に保証人になってもらうべきでしょう。保証契約は貸主と保証人との間の契約ですから、知人の父親の意思を確認して、あなたと知人の父親の間で、父親が保証をする旨合意する必要があります。そして、父親との間でも、父親が保証する旨を記載した父親の署名・押印のある書面を作成しておくべきです。