「銀行カード盗難-暗証番号の設定に注意を」神戸新聞 2006年6月20日掲載
執筆者:富田 智和弁護士
Q:車内に置いていたかばんから銀行のキャッシュカードを盗まれ、預金が引き出されてしまいました。暗証番号は、私の車のナンバーと同じにしていたので、犯人はそれを入力して出金したと思います。預金者保護法という法律ができたそうですが、私の場合、預金は返ってくるでしょうか。
A:銀行のキャッシュカードにより不正に預金が引き出された場合、預金を取り戻すのは従来では極めて困難でした。ところが、近年盗難キャッシュカードにより預金が引き出される被害が多発したことから、あなたもご承知のように、いわゆる預金者保護法が成立し、すでに施行されています。
この法律は窓口での預金の払い戻しには適用がありませんが、盗難キャッシュカードや偽造キャッシュカードにより預金が現金自動預払機(ATM)などの機械によって不正に引き出された場合に適用されますので、あなたの場合にもこの法律は適用されます。
ただし、この法律では盗難キャッシュカードを用いて預金が引き出された場合、預金者(今回の事例でいうところのあなたです)に重大な過失があるときは、金融機関が盗難カードであることを知っていたような場合等を除いて、損失は預金者が負担する、つまり預金が返ってこないということになります。また、預金者に軽微な過失があるときにも、金融機関が盗難カードであることを知っていたような場合を除いて、損失の四分の一は預金者が負担する、つまり預金の四分の一は返ってこないこととされています。問題はあなたの場合にはどうかということ
ですが、あなたは暗証番号をキャッシュカードに書いていたり、他人に教えていたという事情はないため重過失があるとまではいえないでしょう。
しかし、金融機関では他人に推察されやすい暗証番号(生年月日や自宅の電話番号、車のナンバーなど)は控えるようにアドバイスしているにもかかわらず、暗証番号を車のナンバーと同じに設定し、かつそのキャッシュカードを車の中に入れていたというのは暗証番号を他人に推察されやすい状況にあったといえます。
従って、軽過失があったとされ、預金の四分の一が返ってこない可能性は否定できません。暗証番号の設定には十分に気をつけてください。