「返済が困難に-取引履歴の開示を求めて」神戸新聞 2005年12月13日掲載
執筆者:古市 敏彰弁護士
Q:消費者金融業者からお金を借り、返済をしてきましたが、利息は年2割を超え、返済が困難になってきました。ところで、利息制限法という法律があるそうですが、年2割という金利はこれに違反しないのですか。もし違反しているなら、私は利息の支払いをしなくてもよいのですか。
A:年2割を超える利息とありますが、出資法では、貸金業者の場合、年利29.2%までは罰則規定がありません。
しかし、質問にあります利息制限法では、金銭消費貸借における利率について、元本が10万円未満の場合は 年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15% と定め、それを超えて支払った部分は無効と定めています。
例えば、あなたの借金の元本が100万円以上なら、5%分(20%-15%=5%)につき、その金利の定めは利息制限法に違反し、無効となります。無効ということは、5%分については支払う必要がないということです。
あなたが消費者金融業者にこれまで支払ってきた金利のうち、利息制限法超過部分については、金利の支払いとしては無効ですから、元本として支払ったことになるとする最高裁判所の判決があります。そして、その次の支払いについては、減少した元本について改めて利息制限法に基づく金利を求め、これに超えて支払った金利部分は、やはり元本として支払ったことになります。これを繰り返していくと徐々に元本は減り、場合によっては既に支払いが済んでいたり、払い過ぎとなってその分の返還を請求できる場合もあります。
こうした計算を適切に行うために、あなたが消費者金融業者から、いついくら借り、いついくら返したか記載された過去の取引履歴を消費者金融業者に開示してもらう必要がありますが、これまでは取引履歴の開示に消極的な消費者金融業者もありました。しかし、最高裁判所は、貸金業者に取引履歴の開示義務がある旨の判決を下しましたので、今後消費者金融業者は、取引履歴の開示義務がないと主張することは困難になったと言えるでしょう。
なお、貸金業法43条は、貸金業者の貸付金利が利息制限法による上限金利を超えていたとしても、債務者が任意で支払ったうえ、法律の要件を満たす書面を貸付時および返済時に交付しているなど厳格な要件を満たした場合に限り、有効な利息の弁済とみなすとしています。しかし、これらの厳格な要件をすべて満たしている貸金業者はごく少数にとどまります。