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2005年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「転勤の拒否-社命が無効になるケースも」神戸新聞 2005年6月7日掲載

執筆者:大岩 和紀弁護士

Q:全国に支店のある大手企業に勤める35歳のサラリーマンです。このほど、入社以来勤務してきた神戸支店から東北地方にある支店への転属を命じられました。親の介護の問題や、子どもの学校のことなどを考えると、簡単には転勤できません。拒否することはできないのでしょうか。

A:まず、会社の就業規則や、あなたの加入している労働組合と会社との間の労働協約、あなたと会社の個別労働契約の内容を確認する必要があります。

あなたの勤め先が、全国に支店のある大手企業ということですから、就業規則にはおそらく、「会社は、業務の必要に応じて、従業員に対し出張、配置転換または転勤を命ずることができる」などの規定があると思われます。
勤務地の変更や、仕事内容の変更など配転命令権を就業規則に盛り込むことについては、技術革新に伴う労働力の需給の変化や、人員配置上の適材適所の必要性などから、一般的には合理性があって適法、と考えられています。

このため、一般論としては、会社は就業規則などによって、配転命令権を有することになります。

もっとも、配転の必要性を欠くケースはもちろん、配転により会社が得られる利益▽配転を避けることができる可能性▽配転を強いられる従業員の被る不利益▽会社が配転の際に講じた配慮や内容-などから、配転対象者が、配転で受ける不利益が社会通念上、甘受すべき限度を著しく超えている場合でも、権利乱用に当たり、やはり配転命令は無効となると考えられます。

最近の判例にも、あなたのように、親の介護の必要性が高く認められるにもかかわらず、会社が格別の配慮をしなかったとして、転勤命令は権利の乱用に当たると判断したものがあります。
いずれにしろ、配転命令の効果を争うのであれば、会社に対し、介護の必要性などを具体的に述べた上で、命令に応じられないことをはっきりと会社に伝えることが重要と言えるでしょう。