「回収会社への返済-債権譲渡者から当事者へ通知必要」神戸新聞 2005年2月15日掲載
執筆者:岡本 和之弁護士
Q:「あなたがA消費者金融会社から借りた金員について、同社から債権譲渡を受けたのでその旨通知するとともに、A社への支払いは今後、当社あてにするように」という書面が、B債権回収会社から届きました。確かにA社から金を借りていますが、今後はB社に返済金を払うことになるのですか。
A:債権譲渡をするのに債務者の承諾は不要で、債権を譲り渡そうとする者と債権を譲り受けようとする者の合意だけですることができます。
しかし、それでは債務者は自己の関与しないうちに債権者が変わってしまい、誰に支払えばいいのかわからなくなってしまう可能性があります。
そこで、民法では、債権を譲り渡した者から、債務者に債権を譲渡したことを通知するか、債務者が債権譲渡を承諾しないと、債権譲渡を債務者に対抗できないと定めています。
この「対抗できない」という意味は、債務者は譲受人を債権者と扱って支払いをする必要はない、ということです。
ここでポイントとなるのは、債権を譲り渡した者からの通知が必要であることです。債権を譲り受けたと主張する者からの通知では、虚偽の譲り受け人が通知しても判別できないからです。
本件では、債権を譲り受けたと主張するB債権回収会社から通知があったにすぎませんから、B債権回収会社はあなたに債権者であることを対抗できません。したがって、あなたはB債権回収会社に返済金を支払う必要はありません。
なお、このような見知らぬ業者から書面が届いた場合には、まずは冷静になることが重要です。実際にA金融会社から借り入れをしているのであれば、A金融会社に確認してみてもいいのではないでしょうか。