「簡易裁判所-訴額140万円以下の事件を審理」神戸新聞 2004年10月5日掲載
執筆者:中村 真弁護士
Q:簡易裁判所というものがあると聞いたのですが、どんな裁判所なのでしょうか。また、最近になって簡易裁判所でできる裁判の幅が広くなったと聞きましたが、わかりやすく教えていただけませんか。
A:簡易裁判所とは、地方裁判所で扱う事件に比べて、比較的軽微な事件(民事事件・刑事事件の両方を含みます)を、文字通り、簡易迅速に解決することを目的として作られた裁判所です。
このような性質を持った裁判所であるため、そこで扱われる事件は、法律的にはさほど複雑でない事件が多く、紛争の当事者が弁護士に依頼せず、自分で裁判手続きをしているケースが多く見られます。
たとえば「5万円を返してほしい」というような訴えを起こす場合、弁護士に事件処理を依頼すると、弁護士費用などのコストの点で割に合わなくなるという実情があります。
そのため、市民があまり費用をかけずに自分で裁判ができる簡易裁判所の役割は非常に重要で、手続き・運用も、法律に詳しくない一般の方にもわかりやすいものとなっています。
もっとも、このように簡易裁判所が「法律的にはさほど複雑でない事件」の審理を念頭に置いたものであることから、審理できる民事事件は従来、訴額が90万円以下の事件に限られていました。
すなわち、単に「貸したお金を返してほしい」というような事件などで、その請求金額が90万円以下であれば、原則として簡易裁判所で審理することとされていたのです。これは、訴額が90万円を超えるような事件になると、もはや簡易迅速な審理に適さないからという考えによるものでした。
その訴額の上限が、今年4月1日、90万円から140万円まで引き上げられ、扱える事件の幅がやや広がりました。より市民に親しみやすく利用しやすい裁判所になったということが出来るでしょう。