「子どものいじめ-心のケア後に法的責任問う」神戸新聞 2004年5月4日掲載
執筆者:津久井 進弁護士
Q:友人の子どもが、通っている中学校で友だちから陰湿ないじめに遭い、学校にも相談していたそうですが、いじめを苦にして自殺を図り、なんとか命は助かったと聞きました。力になってあげたいのですが、どんなアドバイスをすべきでしょうか。
A:まず第一にすべきことは心のケアです。子どもさんは心に深い傷を負っていますが、家族の方々のショックも極めて大きいでしょう。心療内科などの医学的な措置や、カウンセリングなどの心理ケアの手当てをすべきでしょう。
心の保護の環境が調ったら、法的責任の問題を考えることになります。この場合、責任を問うべき相手は、いじめをした生徒本人、その保護者、そして学校ということになるでしょう。
生徒本人のいじめが、社会通念上許されないようなものであれば、違法行為になることは疑いありませんが、善悪や法的責任が理解できる程度の精神能力を備えていることが必要です。中学生であれば、民事上の責任能力があるといえるでしょう。
保護者の責任をめぐっては、争いになることも多いようですが、親としても十分な監督責任を果たしていなければ責任を負うことになります。学校も、いじめの存在を知りながら何もせずに放置していたのであれば、責任が生じます。
難しい問題として、いじめと自殺の間に因果関係があるかどうかという点があり、これまでは、この点をめぐって請求が認められない例も少なくありませんでした。しかし最近は、学校の責任を肯定する判例が増えつつあります。
深刻な事案が目立つようになり、いじめの問題については、社会全体の問題として真剣に取り組まなければならないものといえます。