「未成年者の訴訟-両親と無関係に裁判はできない」神戸新聞 2004年3月16日掲載
執筆者:加藤 恵一弁護士
Q:19歳の学生。スケートボードで遊んでいて、Bさん宅の門柱を傷つけてしまいました。謝罪はしましたが、話し合いがつかないまま最近、郷里の両親の元にBさんが起こした裁判の訴状が届きました。母は寝たきりで、私にはアルバイト収入もあり、両親とは無関係に裁判はできませんか。
A:結論から申し上げますと、未成年者のあなただけで両親と無関係に訴訟をすることはできません。民事訴訟法は、訴訟能力(単独で有効に訴訟行為をなし、または相手方や裁判所の行う訴訟行為を受けうる能力)という基準を設け、この基準に合わない当事者の行為を無効として、訴訟能力のない当事者を保護しています。
訴訟能力は民法の行為能力を基準に決めることとなっているので、民法上、行為能力のない未成年者は訴訟はできず、常に法定代理人、つまりあなたの両親があなたに代わって訴訟を行わなければなりません。あなたが両親と無関係に訴訟を受けても、あなたの訴訟行為は当然、無効となります。
次に、あなたの寝たきりの母親までが裁判に出頭する必要はありません。未成年者の父母のように共同代理が定められている場合、原則として全員でしなければ効力を生じません。ただ、裁判所に行って言い分を主張するなどの期日における弁論は、他の共同代理人が反対しない限り、単独でできます。したがって、あなたの父親のみが裁判所に出頭し弁論をすればよいのです。
また、代理人に弁護士を頼むこともできますが、それを依頼するにも訴訟能力が必要なため両親があなたに代わって行わなければならず、あなた単独ではできません。
もっとも、未成年者が結婚すると成年とみなされ、以後は完全に訴訟能力が認められますから、結婚すれば一人で訴訟を受けたり弁護士に依頼することができます。