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2003年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「親の借金と保険金-相続放棄すれば支払い不要」神戸新聞 2003年8月5日掲載

執筆者:平尾 麻美弁護士

父が多額の借金を残して死亡しました。ところが、父が私を受取人として生命保険金を掛け続けていたため、保険会社は私の口座に保険金を入れました。父の債権者がしつこく取り立てにきます。父の借金を払わずに済む方法はないのでしょうか。

弁護士:まず相続放棄をしてください。家庭裁判所に行き、相続放棄の申述をして受理されれば、受理証明書の交付を受けてお父さまの債権者に提出します。銀行やサラ金業者などの債権者は、相続放棄をしたあなたに支払いを請求できません。

相談者:相続放棄はいつでもできるのですか。

弁護士:民法で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」という限定があるので、注意してください。

相談者:相続放棄をした場合、生命保険金を受け取ってよいのでしょうか。

弁護士:構いません。保険金請求権は、受取人であるあなたの固有の権利で、相続財産ではないからです。

相談者:でも父の債権者が「生命保険金で借金を返せ」と言ってきたら、払わなければいけないのですよね。

弁護士:いいえ。保険金請求権は相続財産そのものではないので、相続放棄をした以上、受け取った保険金からお父さまの借金を払う必要はありません。

相談者:ところで父の後妻さんが、保険金を後妻さんに遺贈すると記した遺言がある、と最近言ってきました。どうすればいいでしょうか。

弁護士:その遺言は無効ですから、彼女の要求を拒んで構いません。保険金請求権は、保険契約および法律の規定に定められた保険金受取人であるあなたの固有の権利であって、お父さまの財産ではないので、遺贈の対象とはなりません。自分のものでない財産を遺言でやるといってもやれないわけですから、そのような遺言は無効です。