「簡易裁判所の呼出状-書面に主張を書いて提出を」神戸新聞 2003年7月29日掲載
執筆者:高島 浩弁護士
先日、知らない業者から身に覚えのない商品の支払い請求を受けました。電話でしっかりと説明して拒否したのに、最近、簡易裁判所から訴状と呼出状が届きました。業者には既に説明したので、今更会って話すこともないと思うのですが。また裁判所に行かなければ何か不都合はありますか。
弁護士:裁判所には行ってください。最初の期日を勝手に欠席すると、相手方の主張が全部認められることになります。
相談者:全く事実無根の訴えを提起されたときでもですか。
弁護士:はい。訴状を受け取ったにもかかわらず呼び出しに応じなければ、相手の言っていることを争わないとみなされ負けてしまうのです。
相談者:期日には行きます。当日何か用意していくものはありますか。
弁護士:呼出状と、本人確認ができる何かを持っていってください。簡易裁判所はその名のとおり簡単な手続きで裁判をするところなので、必ずしも書類を作っておかなくても構いません。
相談者:法廷で何か難しいことを主張しなければならないのですか。
弁護士:具体的には「『原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする』との裁判を求める」と主張すればよいのですが、そのあたりは裁判所が誘導してくれると思います。その後どちらの言い分が正しいかの証拠調べが始まります。
例えば、相手方が契約書を出してきた場合、筆跡や印影が違うというような主張をしていくことになります。ただ、そのような反論までは最初の日にするわけではないので、安心してください。
相談者:期日に用事ができて、行けなくなっても負けるのですか。
弁護士:そのような場合は、裁判所にこれこれの事情で都合が悪いので期日を変えてくれという書面を出します。呼出状にある事件番号も併せて記載してください。もっとも期日が間近に迫っているときは、電話で問い合わせるとよいでしょう。
相談者:裁判所に行かずに済む方法はないのでしょうか。
弁護士:先ほどの「原告の請求を棄却する…」という主張を期日前に書面にして裁判所に出しておけば、当日欠席してもその書面を主張したとみなされます。 簡易裁判所では2回目以降の期日でも、言いたいことを書面に書いて提出し、期日前に裁判所から相手方に転送してもらっておけば、書面の内容を当日出席して主張したものとみなされるので、欠席を理由に負けることはありません。とりあえず今日にも最初の書面を裁判所に出しておくと良いでしょう。