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2003年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「痴ほうの母の相続-成年後見制度の利用を」神戸新聞 2003年6月17日掲載

執筆者:森川 太一郎弁護士

父の相続でもめて、話し合いがつきません。誰かに間に入ってもらって冷静に話し合いをしたいのですが、相続人の一人である母がぼけてしまっています。そのまま調停をしても差しつかえないのでしょうか。

弁護士:そのまま調停を申し立てるのは控えましょう。家事調停をする人には、調停手続きでの自分の行為の性質を判断することができる能力が必要です。お母さんにそのような能力がない場合、仮に遺産分割調停が成立しても、お母さん、または他の相続人から、その無効を主張されるおそれがあります。

相談者:調停を有効に進める方法はありますか。

弁護士:成年後見制度を利用すればいいと思います。

相談者:どういう制度ですか。

弁護士:判断能力が十分でない人を保護して、同時にその人と取引をする相手方を保護するための制度です。判断能力の欠如の程度に応じて後見、保佐、補助の3つがあります。家庭裁判所からこれらに該当すると審判を受けた人は、成年後見人を代理人としたり、保佐人、補助人の同意を得るなどして調停を有効に進めることができます。

相談者:制度の利用はどこでできますか。

弁護士:お母さんの住んでいる土地を管轄する家庭裁判所です。

相談者:私も利用の申し立てができますか。

弁護士:できます。ただし、補助開始の審判、あるいは補助人や保佐人に代理権を与える審判をするには、本人の意思を尊重するため、お母さんの同意が必要です。

相談者:私も母の後見人や保佐人、補助人になることができますか。

弁護士:可能ですが、誰を選任するかは家庭裁判所が判断します。ただ、あなたが選任された場合、あなたとお母さんとの間で相続について利害が対立するおそれがあるので、家庭裁判所にそのような利害関係のない後見監督人や特別代理人を選任してもらい、その人と遺産分割調停をすることになります。

相談者:後見開始の審判などを受けると、戸籍に記載されるのですか。

弁護士:いいえ。従来は禁治産宣告などを受けるとそのことが戸籍に記載されていましたが、2000年4月に法律が改正されました。ただし、被後見人や被保佐人、被補助人と取引をする人の安全を図るため、戸籍とは別に後見登記等ファイルに登記されます。