「遺産を遺言で-3種類の特徴見極めて」神戸新聞 2003年6月3日掲載
執筆者:森竹 和政弁護士
妻と子どもが3人います。私の死後は、経営している商店を一緒にしてくれている二男に、すべての財産を譲りたいと思っています。どのような方法があるでしょうか。
弁護士:遺言を書かれては?
相談者:どのように書けばよいのでしょう。
弁護士:平常時になされる遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。この中で、最も簡単で1人でも書けるのが自筆証書遺言です。文字通り遺言者が自分で書く遺言で、内容の全文と日付、氏名を書いて印を押せばよいのです。
相談者:パソコンやワープロで作成することはできないのですか。
弁護士:秘密証書遺言には、署名以外の本文をワープロで作成することも認められていますが、自筆証書遺言の場合は認められていません。
相談者:他に注意することはありますか。
弁護士:加除・訂正をする場合にも(1)場所を指示して(2)変更したことを付記して署名し(3)変更場所に印を押す必要があります。面倒な場合は書き直せばよいでしょう。
相談者:公正証書遺言について教えて下さい。
弁護士:証人2人以上の立ち会いの下、公証人に遺言の内容を伝え、公証人が証書の形で作成する遺言です。作成手数料が数万円ほどかかりますが、検認手続きが不要で、遺言書が紛失することがない点でも安心です。
相談者:その「けんにんてつづき」って何ですか。
弁護士:簡単にいえば、偽造でないか、方式に誤りはないかなど遺言書の状態を調査する手続きです。自筆証書遺言と秘密証書遺言については被相続人の死亡後、家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。
弁護士:最後に秘密証書遺言ですが、遺言者がその証書に署名・押印した上で封入し、証書に用いた印で封印をして証人2人以上の立ち会いの下、公証人に自己の遺言書であることを証明してもらうものです。内容について秘密が守られ、偽造されたりする心配もありませんが、作成方法がやや複雑です。それぞれの長短を見極め、早めに作成しておきましょう。
相談者:早速作ってみます。
弁護士:ただ、奥さんや他のお子さんにも遺留分がある点は留意して下さい。
相談者:遺留分はどうしようもないのですか。
弁護士:本人の申し立てと家庭裁判所の許可があれば、相続開始前に遺留分放棄をすることも可能ですので検討してみて下さい。