「校内での暴力事故-学校の責任は総合的に判断」神戸新聞 2003年4月15日掲載
執筆者:土居 由佳弁護士
子どもがささいなことから上級生のグループに目をつけられ、休み時間に学校内で集団暴行を受け、重い障害を負ってしまいました。学校側は「子ども同士のけんかで、教師の目を盗んで行われたことで予想できなかった。学校に責任はない」という態度です。いくら子ども同士のけんかとはいえ、校内での事故には学校が責任を負う場合もあるのではないですか。
弁護士:学校の教師に生徒のけんかやいじめによる事故を未然に防止するための安全配慮義務違反が認められれば、公立校の場合は国または公共団体が、私立校の場合は学校法人が責任を負うことになります。
相談者:どのような場合に、安全配慮義務違反が認められるのですか。
弁護士:学校での教育活動やこれと密接な関係のある学校生活において、通常予測可能な事故が発生した場合です。
相談者:私の子どもの場合はどうでしょう。
弁護士:休み時間は学校における教育活動と密接な関係にあるので、教師には生徒の行動についても一般的な指導監督義務があるとされています。
相談者:学校側は予想できなかったから責任はないと言っていますが。
弁護士:確かに、休み時間は教師も教員室に戻るのが普通ですから、特別に危険な行為を行う生徒のいることが予測できない限り、教室に留まって生徒の行動を監督していなくても、職務上の注意義務を怠ったことにはならないといえます。
担任教師をはじめ学校側が、お子さんが日ごろからいじめられている事態を知っていたり、傷害を負わせた上級生グループの問題行動を知っていながら、適切な措置を取らずに放置し事故が起きたのであれば、学校側に注意義務違反が認められ、学校が責任を負います。
相談者:学校が責任を負わない場合とは?
弁護士:他の生徒に対し暴行を加えたことのない生徒が、傷害を負わせたような突発的な事故は予測不可能で、学校側が防止のために具体的措置を取る義務があったということはできません。生徒の年齢によっても、学校側に要求される注意義務の程度が変わります。
相談者:具体的にはどういうことでしょうか。
弁護士:生徒の年齢が上がると、それだけ自主的な判断に任せる部分が多くなり、教師の指導監督義務が狭まってきます。これらの事情を総合して、学校側に事故について安全配慮義務違反があったのかどうかが判断されることになります。