「囲繞地の通行-拒否できないが制限はできる」神戸新聞 2003年3月4日掲載
執筆者:辻本 武之弁護士
所有している空き地の奥に新しい人が引っ越してきました。このお宅は袋地で、私の土地を通らなければ公道に出られないのですが、私の敷地の一部を駐車場として勝手に使われて迷惑しています。駐車場代や通行料をもらったり、通行をやめてもらったりできるのでしょうか。
弁護士:相手方の土地は公道に接しない袋地なので、民法上、囲繞(いにょう)地通行権が認められます。
相談者:それはどのような権利ですか。
弁護士:袋地の所有者は、公道へ出るために袋地を取り囲む土地(囲繞地)を通行することができるというものです。この権利は契約などではなく、法律上当然に認められるもので、原則として囲繞地の所有者は通行を拒否することはできません。必要があれば、通路を開設することもできます。
ただし勝手に、また自由に囲繞地を使っていいという権利ではありません。通行する方法や場所は、通行するのに必要で、かつ囲繞地の所有者の損害が最小限に押さえられる範囲に限られます。
相談者:駐車場として使うのも認められますか。
弁護士:囲繞地を駐車場として使うことは、囲繞地通行権の範囲を超えているため許されません。どうしても相手方が駐車場として使わせてほしいということであれば、交渉して新たに賃貸契約を結ぶことになります。この場合は、契約で駐車場代を決めることになるでしょう。
相談者:通行料はもらえますか。
弁護士:相手方に囲繞地通行権がある場合には、原則として、通行する囲繞地の所有者に償金を支払う義務があるで、もらうことができます。
相談者:できれば他の人の土地を通ってほしいのですが。
弁護士:他の人の所有する囲繞地を通る方が損害が少ないような場合は、そちらを通るように求めることができます。例えば、通行するのに何も障害のない空き地と、既に壁や建物が作ってある土地では、空き地の方が損害が少ないでしょう。また共有だった土地を分割した結果、袋地になった場合などには、他の囲繞地の所有者に迷惑が掛からないように、それによってできた囲繞地のみを無償で通行することができるので、そちらを通ってもらうよう求めることができます。