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2003年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「養育費の不払い-家裁から履行調査・勧告を」神戸新聞 2003年2月18日掲載

執筆者:柿沼 太一弁護士

2年前に離婚し、小学生の子ども2人と暮らしています。離婚調停の際、夫は慰謝料200万円と毎月の養育費5万円を支払うことを約束し、その旨が調停調書にも書いてあります。しかし1円たりとも支払おうとしません。夫の手取り報酬は40万円はあるはずです。こちらは1Kのアパートに3人で、先行きが心配です。

弁護士:ご主人が慰謝料200万円と毎月の養育費5万円の支払いを約束する調停が成立しているのですね。とすると、慰謝料200万円に、既に発生している養育費分120万円の合計320万円分が現在請求できる金額になります。

相談者:家庭裁判所の調停調書があるので、その320万円について、夫の給料全額から回収できるんですよね。

弁護士:確かにご主人の給料を差し押えて回収することはできますが、ご主人にも生活があるので、給料全額の差し押えはできません。本件だと、月々の報酬40万円から21万円を引いた月々19万円について差し押さえができます。

相談者:退職した場合にはどうなりますか。

弁護士:退職金については特別の規定があり、額にかかわらず、その4分の1しか差し押さえができません。退職金が1000万円とすれば、250万円となります。

相談者:手続きが複雑そうで、弁護士さんに依頼するとなると費用もかかりますよね。また、将来の養育費の請求についても同じような手続きをしなければならないのですか。

弁護士:おっしゃるように、給料差し押えなどの強制執行の手段には費用がかかり、手続きも複雑です。そこで、あなたのように家事調停で約束したことを守らない人に対しては、家庭裁判所に履行調査・勧告を出してもらうことが考えられます。家裁の調査官が、義務者(本件の場合、元夫)に対して、電話・書面で支払うように勧告するほか、直接義務者宅に赴いて履行していない分の履行を勧告する制度で、一定の成果を上げています。それでも支払わないときには、家裁は履行命令を出すことができます。これは義務者に履行を命じた上で、従わない場合は10万円以下の科料に処する制度です。

相談者:私一人でもできますか。

弁護士:できると思います。いずれも家庭裁判所に申し立てる手続で簡易・簡便ですので、ご自分でやるというのであれば、家裁の事件受付に一度相談されてはいかがでしょうか。