「報労金請求-額面価値のない小切手」神戸新聞 2001年3月28日掲載
執筆者:本郷 秀夫弁護士
小さな会社経営者が、売掛金として受け取った300万円の小切手を落としてしまいました。警察に届けたところ、親切な高校生が拾ってくれていることが分かり、小切手は戻ってきましたが、その高校生は「法律で20%まで報酬を請求できることになっている」と言って60万円を請求してきました。
相談者:法律では、三百万円の二〇%である六十万円を支払わなければならない、と定められているのでしょうか。
弁護士:法律上は「拾得物(拾った物)の価格の五%から二〇%の報労金を拾得者(拾った人)に支払わなければならい」ということになっています。
相談者:この「拾得物の価格」とは、小切手の金額である三百万円を意味するのですか。
弁護士:拾得した物が現金であれば、現金はそのまま使用できますから、その全額が「拾得物の価格」になります。しかし、小切手の場合、拾得者は小切手を自由に換金して使用することができませんから、三百万円全額が「拾得物の価格」になるわけではありません。そして、最終的には裁判で裁判官が決定することになりますが、過去の裁判例では約束手形について手形金額の二分の一や三分の一と決められたものがあります。
相談者:次に「五%から二〇%の報労金」とありますが、実際は何%くらい支払えばよいのでしょうか。
弁護士:これは場合によるのではないでしょうか。ただ、報労金は拾得者の好意に対しては遺失者(落とした人)から支払われるものですから、遺失者と拾得者が話し合いをして決めるのが普通だと思います。ただ、どうしても話し合いで解決しない場合は、裁判所で裁判官に決めてもらうことになります。
相談者:よく分かりました。もう一度、小切手を拾ってくれた高校生と話し合ってみます。