「震災で土地が移動 境界は区画整理の手法で」神戸新聞 2000年1月28日掲載
執筆者:永井 幸寿弁護士
阪神・淡路大震災で土地が移動し、隣接地との境界線が分からなくなったという相談です。あらためて境界線を確定するには、どのような調査や手続が必要なのでしょうか。
相談者:私の家の近所は、阪神・淡路大震災のときに、地面が数十センチも移動してしまいました。今度家を売るので、この機会に近所のみんなと境界をはっきりさせようと思います。地面が動いたときは境界はどうなるのですか。
弁護士:境界は動かないことになっているので、今回の震災で新しい通達が出ました。地震で広域的に地表面が移動したときは、相対的に境界も移動したものと扱い、局地的な地表面の移動(がけ崩れなど)は、移動しなかったものと扱うというものです(平成7年3月29日付、法務省民事局長回答)。あなたの場合は、相対的に境界が移動した可能性がありますね。
相談者:近所の境界をはっきりさせるためには、弁護士に頼めば解決しますか。
弁護士:広域の境界を明確にするためには、弁護士だけでは足りません。土地の測量が必要ですから土地家屋調査士が必要ですし、登記手続がいるので、司法書士が必要です。また、住民の合意の形成も必要ですから、コンサルタントが必要となるでしょう。土地の増減に伴う清算などの問題も出ますから。さらに、官民境界の確定のためには、自治体との連携も必要です。
相談者:大変ですね。
弁護士:実質的には土地区画整理と同じ手法を用いることになります。このような手法は、阪神・淡路大震災ではじめて用いられた手法です。
相談者:そんなにたくさんの専門家を、どうやって探せばよいのでしょう。
弁護士:阪神・淡路まちづくり支援機構に頼めば、震災問題について経験のある各分野の専門家をチームで派遣してくれますよ。
相談者:それはどんな団体ですか。
弁護士:被災地の住民のまちづくりを支援するためにできた専門家の団体です。兵庫県弁護士会、近畿税理士会等、弁護士、税理士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、建築士の6職種9団体が団結して組織したものです。
相談者:それは、どこにありますか。
弁護士:事務局は兵庫県弁護士会内にありますから、一度電話で問い合わせてみたらいかがですか。
(078-362-8700)