「クーリングオフ 売買契約の撤回は書面で」神戸新聞 2000年1月14日掲載
執筆者:中山 稔規弁護士
訪問販売などをめぐるトラブルは、各地の消費相談窓口にもしばしば寄せられます。今回はゴルフ会員権の購入契約ですが、クーリングオフの期間は過ぎているようです。解約は可能なのでしょうか。
相談者:先日、Bさんからゴルフ会員権を購入したのですが、契約を取りやめにしたいのですが。
弁護士:本来一旦成立した契約を、相手方に落ち度もないのに、買主が一方的に解除する事はできません。契約の内容にもよりますが、手付金のような金員の交付があり、その金員を流す事によって解除できたり、解除によって相手方が被る損害を賠償する事で話し合いで合意解除する方法等はあります。
相談者:では、いったん成立した契約は、お金を払わなければ解除できないのですね。
弁護士:場合にもよりますが、原則的にはそうです。
相談者:他に方法は無いのでしょうか。
弁護士:契約を結ぶ時は、ある程度よく考えてから行って下さい。会員権の購入を申し込んだのはどこだったのですか。
相談者:私の事務所です。
弁護士:その時Bさんから何か書面をもらいましたか。
相談者:購入申込書のようなものをもらいました。
弁護士:その書面はきょう持ってきてますか。
相談者:いいえ。
弁護士:法律相談に来るときは、関係書類をすべて持ってきてくださいね。でも、あなたの場合、書面で購入申し込みを撤回すれば済むかもしれません(クーリングオフ)。その書面には、書面の交付を受けてから八日以内であれば申し込みの撤回ができるなどと書かれていませんでしたか。
相談者:いいえ。
弁護士:それならば、会員権購入申し込みを撤回すると、書面でBさんに言いなさい。それで契約はなかったことになります。
相談者:実は購入申込から三週間たっているんですが。
弁護士:あなたの事務所でゴルフ会員権購入申し込みをした場合、「訪問販売等に関する法律」に規定されている内容の書面が交付されておれば、その書面を受け取った日から八日以内に申し込みの撤回をしなければなりませんが、そのような書面が交付されていなければ、その期間が始まっていないので、今でも撤回が可能ということになります。購入代金をすべて支払って、ゴルフ場を何度も利用するなどしておれば撤回もできなくなる場合もありますが、本件では大丈夫でしょう。クーリングオフに関する事項が書かれていないのであれば、法律で要求されている書面の交付はまず無いと言えます。
相談者:早速連絡を取ります。
弁護士:撤回は書面でしなければなりません。また、内容証明郵便を使った方が良いです。Bさんがそんな書面は来ていないと言い出したら面倒ですからね。せめて書留や配達証明付で出された方が良いです。
相談者:分かりました。