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1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「遺産の分割協議 相続人全員の合意が必要」神戸新聞 1999年12月24日掲載

執筆者:中川 勘太弁護士

相続をめぐるトラブルは珍しくありません。今回は相談者が知らぬ間に、残りの遺族だけで遺産分割の話し合いが済んでいたというものです。このような協議は有効なのでしょうか。

弁護士:お父さんを亡くされたそうですね。

相談者:そうなんです。今年の夏に。

弁護士:それは大変でしたね。

相談者:最近ようやく落ち着いてきました。ところで、父の遺産のことなのですが・・。

弁護士:はい?

相談者:先日、父の遺産の相続について話をしようと、兄のところへ行ったのです。すると、既に兄と母との間で協議が終わっていると兄に言われました。兄が言うには、父は生前、私に土地を贈与しているので、私に相続分はないから、兄と母だけで遺産の分け方を決めてしまったとのことです。私としては、いくら土地をもらっているからといって、何も相続できないということはないと思うのです。

弁護士:なるほど。お父さんの遺言はないのですか?

相談者:はい。急なことでしたから、何も言い残さずに亡くなりました。

弁護士:そうすると、遺産の分け方は相続人間の協議で決まることになりますね。ご兄弟はお兄さんだけですか?

相談者:はい。

弁護士:そうすると、あなたとお母さん、お兄さんが相続人ということになります。ですから、あなたとお母さん、お兄さんの協議で遺産の分け方を決めることになります。あなたのお話では、お母さんとお兄さんだけで遺産の分け方を決めてしまったということですが、相続人全員の合意のない遺産分割協議は無効ですので、もう一度協議をやり直す必要があります。

相談者:しかし、兄が言うには、もう決まったことなのでやり直す必要はないということなのですが・・。

弁護士:お母さんとお兄さんだけで作成した遺産分割協議書は無効ですので、そのような協議書では相続財産の名義変更ができません。ですから、あなただけでなく、お兄さん、お母さんのためにも、もう一度遺産分割協議をやり直し、新たな遺産分割協議書を作成するべきです。

相談者:母や兄が再度の協議に応じてくれない場合はどうすればよいのでしょう。

弁護士:家族間のことですから、本来は当事者同士の話し合いで解決するのがベストです。しかし、家族間だからこそ話し合いがうまくいかない場合もあります。そのような場合は、家庭裁判所に家事調停の申立てをしてみてはどうでしょう。それでも話し合いがつかなければ、家庭裁判所の審判を申し立てる方法もあります。