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1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「借家の契約更新拒絶 「正当事由」なければ無効」神戸新聞 1999年11月26日掲載

執筆者:西谷 良彦弁護士

相談者:あと半年余りで借家の契約期間が切れるのですが、家主からもう契約を更新しないと言われました。小学生の息子がいて、転校させたくないので、できれば息子が卒業するまではここに住みたいのですが、明け渡さなければならないのですか?

弁護士:それは大変ですね。家主さんはなぜ更新しないと言っているのですか?

相談者:実は私、家主さんと折り合い悪くて。毎月ちゃんと家賃を払ってるし、近所迷惑になるようなこと何もしてないのに、何か嫌われてるんですよ。

弁護士:あらあら。ほかには?

相談者:家主さん自身が、この家に住みたいんじゃないかなあ。駅から近いですし。

弁護士:家主さんの今の家は?

相談者:ありますよ。ちょっと離れたところに立派な自宅が。

弁護士:家族とか仕事は?

相談者:奥さんと二人で暮らしているみたいですけど。仕事も順調と聞いています。

弁護士:ふーん。詳しく聞かなければならないけど、今聞いた話だけなら明け渡す必要はないでしょうね。

相談者:え?いま話したことって関係あるんですか?

弁護士:うん。ちょっと難しい話になりますけど、借家人は借地借家法(旧借家法)という法律で保護されていて、家主が期間満了6カ月前までに契約の更新拒絶をしても、必ずしも明け渡し義務が生じるわけじゃなくて、家主さんが「正当事由」を立証しなければならないことになっているんです。正当事由がない場合は契約は自動的に更新されます。

相談者:それでそんなこと聞いてたんですか。

弁護士:うん。さらに難しくなるけど、「正当事由」は、[1]双方の建物使用の必要性を主に、[2]賃貸借関係の従前の経過、[3]建物の利用状況、[4]建物自体の状況、[5]地域の状況、[6]立ち退き料等の提供などを加味して総合的に判断されます。
ちなみに、[6]は重要な要素だけど、他の事情なしに[6]だけで正当事由が認められることはありません。だから、契約期間が満了しても、家主さんにお金を積まれて出ていってほしいと言われただけでは、明け渡す義務はないわけです。

相談者:そうですか。取りあえずは一安心です。