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1999年 神戸新聞掲載『くらしの法律相談』

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「単純保証と連帯保証 債務の支払い責任に差」神戸新聞 1999年7月23日掲載

執筆者:太田 尚成弁護士

相談者:知人から借金の保証人になってほしいと言われているんですが、保証人について教えてください。

弁護士:保証人というのは、主たる債務者が債務を履行しない場合に、代わって債務を履行する人のことです。

相談者:その知人は人柄もまじめだし、親せきにも資産家が多く、債務を履行しないとは思えません。本人も「絶対に迷惑は掛けない。借入手続きに保証人の判が形式的に必要なだけ」と言っています。実際には印鑑証明書を取ってきて、借用書に実印を押すだけかなと思っているのですが。

弁護士:ウーン、それはどうですかね。その人が個人酌に信用のある人でも、経済的、外部的な事情で債務の履行ができなくなることは十分にあります。それに、法約には親せきの財産を当てにすることはできませんし。そもそも、重たる債務者の履行に何の問題もなければ、貸主もわざわざ保証人を要求する必要もないわけです。

相談者:だんだん心配になってきました。でも保証人が代わって債務を履行するといっても、自分が借りたお金ではないのですから、まず主たる債務者の方から取り立ててもらって、その不足分を払えばいいんですよね。

弁護士:あなたの保証は「連帯保証」になってませんか。

相談者:あっ、確かそうだったと思います。

弁護士:そうすると、法的にはそういうわけにはいきません。連帯保証でない単純保証なら、債権者からの請求に対し、まず主たる債務者に請求してくれ(催告の抗弁権)とか、主たる債務者に執行しやすい財産があるから、そちらの方からまず回収してくれと要求する権利(検索の抗弁権)があるんですが、連帯保証の場合には、債権者は主たる債務者と連帯保証人のどちらからでも、あるいは同時に請求ができるんです。

相談者:えっ、連帯保証というのはそんなに厳しいんですか。知人より先に借金を払わされたら、私の方が払わされ損になってしまうのではないですか。

弁護士:もちろん連帯保証人が主たる債務者に支払わされたお金を、今度は主たる債務者に求償という形で請求はできます。ただ、その求償の時に主たる債務者が無資力だったら、事実上、保証人の負担になってしまいます。そのほかにも、保証人が複数いる場合に保証責任額が分割されなかったり(分別の利益の否定)しますから、連帯保証責任には注意が必要です。連帯保証でも単純保証でも、自分が使ったわけでもないお金の責任を追及され、後悔している人は大勢います。安易な気持ちで判を押すのは考えものです。

相談者:よく分かりました。妻とももう一度相談します。