共謀罪の新設に反対する会長声明
2006年(平成18年)4月20日
兵庫県弁護士会 会長 竹本 昌弘
報道によりますと、与党は今月21日から「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」(以下、「本法案」という)の修正案に関する審議入りを決定し、今国会での成立を期そうとしています。
本法案は、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(以下、「国連条約」という)に基づき国内法化を図るものとして2003年の通常国会から審議されてきたものですが、いわゆる「共謀罪」の新設を含むことから、日弁連を初め当会も昨年7月21日及び10月6日の2度にわたり会長声明を発し、強く反対してきました。
報じられている修正案では、第一に、適用対象の団体を「その共同の目的が罪を実行することにある団体である場合に限る」とする、第二に、「行為」を「犯罪の実行のためにする行為」や「犯罪の実行のために資する行為」として、何らかの準備行為を要件として加える、とされています。
しかしながら、第一の点については、ここにいう「団体」は、恒常的な組織のみを意味するわけでなく、一時的に形成された複数人の集まりをも含むと解される余地もあります。従って、例えば市民団体にも共謀罪が適用されることになりますから、国連条約が取締りを求めるマフィアなど組織的な犯罪集団に限定されません。また、第二の点については、何らかの準備行為を加えるとしても、それは共謀罪の成立を立証するために証拠が必要だという当然の理を述べたにすぎず、何ら、共謀罪の成立範囲を限定したことにはなりません。
このように、修正案も、共謀罪を限定したものとは到底言えません。
また、(1)共謀罪が導入されると、犯罪捜査においても、広範囲の盗聴やメールの傍受などが必要になり、取調べにおいても自白強要の傾向が強まり、人権侵害の頻発、警察が市民生活の隅々まで入り込む監視社会をもたらす危険がある、(2)自首による刑の減免が規定されることから密告などの風潮も強まりかねないなどの、当会の2度の声明で指摘した問題点も、全く解決されていません。
このように、本法案は、仮にこのように修正しても、思想信条の自由など重要な基本的人権を侵害し、自白強要の取調方法が強まり、監視社会を招くなど、市民生活にとって重大な脅威になるものであり、当会は、強く反対します。