司法制度改革審議会最終意見に対する兵庫県弁護士会の会長声明
2001年(平成13年)6月12日
兵庫県弁護士会 会長 大塚 明
本日6月12日に司法制度改革審議会の最終意見が発表された。
兵庫県弁護士会は、この最終意見が、
裁判員制度などの国民の司法参加、
裁判官の給源拡大や他職経験、特例判事補制度の廃止などの裁判官制度の改善、法科大学院の創設など法曹養成制度の改善、
を志向している点については、これを評価したい。
改革の必要性は、現在の司法が、司法に求められている本来の機能を十分に果たしていないことに端的に現れている。その原因は様々であるが、明治以後、そして戦後も人口増や経済規模の劇的な増大にもかかわらず、法曹人口とりわけ裁判官や検察官がほとんど増加することなく今日に至っていることに、大きな原因がある。我々は既に弁護士を含む法曹人口の大幅増員を受け入れた。今後は、すみやかに裁判官と検察官の大幅増員をはかり、判事補制度廃止をふくむ裁判官制度のさらなる改善を行うことが、緊急の課題である。また、最終意見は、刑事司法における、捜査過程の記録や捜査側証拠の開示が極めて不充分であること、司法による行政チェック機能の強化のための具対策が欠如していること、弁護士が権力から市民や少数者を守る砦であるための弁護士自治への理解が不足していること、弁護士報酬の敗訴者負担の要件が不明確で、訴訟提起を萎縮させるおそれのあること、等々の大きな問題点を残している。これら問題点については、我々は今後も粘り強く改善を求める。
今必要なのは、市民のための改革を阻もうとする一部勢力や、改革を骨抜きにしようとする動きに対抗して、真に市民が必要とする改革の方向を守り、少数者や弱者の基本的人権を守る司法制度を確立することである。我々は、従来の司法制度が市民に対して果たすべき役割を十分に果たしていなかったこと、これから市民が利用しやすい司法制度を作り上げていかなければならないこと、を率直に認め、今後、司法改革をよりよい方向へ導き、これを実現するべく、一層の努力を重ねることを誓う。