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安田好弘弁護士の保釈問題に関する会長声明
1999年(平成11年)7月12日
兵庫県弁護士会 会長 丹治 初彦
近時、保釈に関する裁判の現状は極めて憂うるべき状況にある。
保釈は、憲法上の権利であり、とりわけ罪証隠滅防止を保釈除外事由とすることについて、違憲の疑いがあるとの意見も強い。
それにもかかわらず、統計によると勾留率が上昇傾向にあるのに対して、保釈率の低下は明らかであり「人質裁判」と批判される運用の実態が一層深刻なものとなっている。
この傾向の象徴的な事件が、安田好弘弁護士の強制執行妨害罪に関する保釈問題である。
すなわち同弁護士は、平成10年12月6日、強制執行妨害罪を被疑事実として逮捕され、同年12月25日起訴され、現在審理が継続中である。この間、東京高等裁判所は、本年6月11日および同年7月6日、受訴裁判所である東京地方裁判所が2度にわたって付した保釈許可決定を取り消したものである。
本件の法定刑が2年以下の懲役又は50万円以下の罰金であるから権利保釈の事案であること、長期勾留に及んでいること、全国各地の弁護士3357名にも達する早期保釈要請の意見が提出されていることなどに鑑みると、単にこれを個別事件として看過することはできない。関係機関の再考を要望するものである。
折りしも、今年は、刑事訴訟法制定50年の年であり、司法改革が国民的課題となっている。私たちは、これを機会にわが裁判官の前に立ちはだかる、制度の欠陥と運用の課題を明らかにし、人権保障を全うするために全力を尽くすことを決意し、ここに意見を表明する。